2026.09.29

30センチの靴 既製靴にない喜び

既製靴では出会えなかった、大きな革靴をお仕立てさせていただきました。

お客様は普段、30cmのスニーカーを履かれています。しかし国内では、28cm以上の革靴を取り扱う店舗は限られ、サイズがあっても「本当に足に合う一足」を見つけることには、長く悩まれていたそうです。

銀座のギャラリーを巡られていた奥様が、「主人のために」とお問い合わせくださったことが、ご縁の始まりでした。

ご夫婦でご来店いただき、普段の靴選びやお困りごとを丁寧に伺いました。靴下を履いた状態で採寸した後、より正確に足の状態を拝見するため、靴下を脱いだ状態でも確認させていただきました。

爪の欠け、タコ、外反母趾の傾向など、足にはいくつかのサインが見られました。
計測上の足長は28cm台。一方で、甲まわりや踵まわりには、JIS規格の平均的な30cm以上の靴に相当する数値がありました。

つまり、足長に合わせて28cmの既製靴を選べば甲が収まらず、30cm台の靴を選べば履くことはできても、踵や甲を十分に固定できない。靴の中で足が前へ滑り、無意識に指先で踏ん張り続けることで、指が強張り、爪にも負担がかかっていたと考えられます。

目指したのは、ただ「大きな靴」ではありません。

踵と甲はしっかりと支えながら、指先には無理なく動ける適切な余白をつくる。一点で締め付けるのではなく、靴全体で足を包み込み、支える一足です。

これまでとは異なる履き心地との出会いになるよう、木型から製作を進めてまいりました。

履き始めは、革の硬さや新しいフィット感に戸惑われることもあるかもしれません。新築の家に引っ越したばかりのように、最初は少しぎこちなく感じるものです。

けれど、履き慣らしと調整を重ねながら、お客様の足と靴が少しずつ馴染んでいくことで、これから10年、20年と寄り添う愛靴になってくれることを願っています。

このたびは靴のオーダー、そして大きな靴のSNSモニターにご協力いただき、誠にありがとうございました。

リンゴセイカ
店主 安広洋司